Reading #2

まんまと5ヵ月ぶりの投稿。しかし個人的には、社会人生活がスタートして3ヵ月が過ぎ、たった3ヵ月で本を読む時間ができるほど己の心に余裕が生まれたことを祝福したい。成長だ。嬉々とした気持ちで記録を残す。

 

恐れていた「社会人」に遂になってしまったわけだが、仕事をしながら自分の”伝える力”の無さに落ち込むことが増えた。言葉のチョイスから抑揚まで、まだまだ緊張という名のバイアスがかかることもあって、うまくいかないことが多い。そこで、安直かつ無謀にも今年の目標の一つを読書と定めたので、頑張って読んでいきたいと思う。

今回読了したのは村上沙耶香著の「コンビニ人間」だ。無知でお恥ずかしいが、第155回(2016年)芥川賞の受賞作らしい。読書好きの友人に勧められて、比較的短編ということもあってあっという間に読み終わった。

 

背表紙のあらすじはこうだ。

「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて…。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。

 

主人公が生粋のコンビニアルバイターで、コンビニで働くことを日々の生活の軸にしている。ちょっとサイコパス気味なパーソナリティも相まって、周りから白い目で見られたり、家族が一生懸命彼女を”治そう”と必死になっている描写が印象的だった。大学生から始めたコンビニのアルバイトを18年続け、就職も恋愛もしたことがない主人公が「一般的にみるととてつもなく異質な存在」として描かれているが、正直私は働くことの目的は「お金を稼ぐこと」だと思っているし、誰にも迷惑かけてないし働き方は単なる手段なのだから、なんだって良くねと思ってしまった。

 

働いている描写の中で「そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。」というセリフがあるが、コンビニいるときの主人公が感じている感覚がすごくリアルに描かれている。特に聴覚と視覚にフォーカスがあたっており、かつて私自身もコンビニでアルバイトをしていた経験があるため、目をつむると容易にその光景が浮かんで、音や人の動きを敏感に察知して行動する主人公に共感できた。お客様やお店にとっては超仕事ができるサービス精神溢れた店員だが、彼女自身にとっては最早そうするようにプログラムされているようなもので、コンビニの中で起こる事象に合わせて淡々と動く感じがシステマチックに感じられて、はたから見たらちょっと度を越えてるけど、そんな自分に喜びや安穏を見出してる。自分が知らないだけで、そんな生き方も勿論あるよなと思った。

 

どうしても登場人物に感情移入タイプなので、やっぱりますます、彼女の何が悪いんや!という気持ちになってくる。「普通」という枠組みにはめようとする人はやっぱりどの時代にも一定数いるし、その言葉自体が孕んでいる威力を実感したし、自分がこれまで生きてきた中で培ってきた価値観は大切だけど、そこに当てはまらないからといってジャッジするのではなく、”アップデート”だと思って自分の肥やしにしていけるといいなと思ったのだった。完。